ブランドは取り出すもの
クライアントに対して「ブランドをつくってる感覚が実は全然ないんです。取り出してる、という感覚に近いです。」と伝えると大体キョトンとされてしまうのですが、これは率直な気持ちです。
特に新規ブランドを立ち上げたばかりのタイミングは100%この感じです。私がブランディングをする際に、ミッションとして掲げているのが「持続可能な経営に貢献する」です。つまりどんなかっこいい、おしゃれなイメージをつくったところで、持続しなければ価値がないと思っています。ではどうすれば持続可能なブランドを生み出せるのか。私の観察と経験からわかったのは、経営者もしくは企業の「あり方(Be)」から生まれているかどうかです。経営者自身も気づいていないような領域にまでアプローチを進め、性格を形づくっているものや意思決定の理由など、特徴づけている「源泉」を掴みます。アイデンティティという言い方でも良いですが、その人をその人たらしめている何かが必ずあります。そこを掴み取って、そこにがっちり紐づく形で経営者、もしくは企業の中からブランドを取り出すのです。
なので、生まれたブランドは経営者にとって全く違和感がないはずです。さらに、ただそのまま取り出してるわけではなく、必ず「エンパワー」する要素を入れます。
例えば、ある社長さんは「関口さん、俺は他の社長のようにこれ!ってビジョンがないのが悩みなんだよ。」と打ち明けてくださいました。色々伺ってわかったのは、当の社長さんはビジョンがないわけではなく、夢が溢れるほど出てくる方だったんですね。それを絞りきれなくて、こんな俺ってどうなんだ、と思われていたわけです。でも、これこそが社長、ひいては企業の強みだと思いました。そこから生み出したスローガンが
「夢語りびと 夢叶えびと」
です。
悩みを真正面から受け止め、肯定し、力に変える言葉になっていると思います。
パラフレーズなんて言い方もしますが、片方から見たらネガティブなことでも、逆から見たらポジティブになるんですね。なので、目新しい何かをよそから持ってくるのではなく、経営者自身の中にあるもの、それは良くても悪くてもどちらでもいいんです、それは全て大切なアイデンティティなので、それをブランドの普遍的な価値に変えてしまいます。
ただ、ブランドは生まれてそのままというわけでなく、そこから「ing」、つまり成長させて行く必要があります。この段階になると、ブランドが一人歩きして行くような感じになるので、そのフェーズになって初めて「つくる」感覚に近くなるように私自身は感じています。
あり方(Be)はとても大切な部分なので、それについてはまた別の機会に詳しく触れて行こうと思います。