価格の魔法
コロナや戦争の影響で、いまあらゆる業界が原価高による値上げで苦しんでいます。
「良いものを安く」を日本の商習慣の美徳とし、すっかり浸透し切った中での「値上げ」に対しては買い手側はもとより売り手側の心理的抵抗感はかなり大きくあります。
ブランディングの世界では付加価値をつけて高く売ろう、そういった考え方がありますが、私自身は少し違和感を感じています。
私の見立てでは、日本における多くの商品・サービスに既に付加価値があるにもかかわらず、物自体の基本的価値にしか値付けをしていません。
ですので、自社商品・サービスの付加価値は、実際誰にとってどんな価値があるのかを見定め、そこに値段をつけることで「適正な価格」にすることができます。
とはいえ、なんです。
先にも述べた価格を上げることへの心理的抵抗感、これを容易に外すことが難しく、ここに今ある問題の本質があります。
そこで、私がお客様に提案しているアイデアとして「松竹梅効果」があります。
マーケティングの世界では「ゴルディロックス効果」とも言いますが、要は上中下の三段階の選択肢があった場合、人間は無意識のうちに真ん中を選んでしまうという心理的傾向を活用した手法です。
例えばハンバーグレストランを例にしてみましょう。
一番のお勧めは1200円のキングハンバーグと量を減らした1000円のクイーンハンバーグがあったとします。
原価高の影響で、1200円をなんとか1300円にしたい、でもそうすると値上げの抵抗感から売り上げがガクッと落ちてしまう可能性もある。
じゃあ、原料の質を落として、、というのは完全なる悪手で、終わりの始まりです。
そうではなくて、もう一品、価格をグッと上げた「上」の商品を作ったらどうでしょう。
例えば1日10食限定1800円の超熟スペシャルハンバーグ。
メニューにはこう並びます。
スペシャルハンバーグがない場合
・1200円キングハンバーグ
・1000円クイーンハンバーグ
キングハンバーグを100円値上げ
・1300円キングハンバーグ
・1000円クイーンハンバーグ
やっぱりどうしても値上げが目立ちますよね?
そこで超熟スペシャルハンバーグを追加してみましょう。
・1800円超熟スペシャルハンバーグ(10食限定)
・1200円キングハンバーグ
・1000円クイーンハンバーグ
キングハンバーグを100円値上げ
・1800円超熟スペシャルハンバーグ(10食限定)
・1300円キングハンバーグ
・1000円クイーンハンバーグ
どうですか、超熟スペシャルハンバーグがある場合とない場合で100円の値上げの感じ方が変わりませんか?
そしてさらにいいことに、10食限定のスペシャルハンバーグも、必ず売れるんです。
そうすると、当然総売上もググッとアップしますし、クオリティも担保できるので、リピーターも増え、継続的な施策へとつながります。
これが「松竹梅効果」による「価格の魔法」なんです。
なんとなくうつむいて下を向いてしまいがちな現代ですが、そうではなく上を向くことで可能性を拡げることができます。
ぜひ自社の商品やサービスに「松竹梅」を取り入れてみてはいかがでしょうか?